ゴールがあるとしたら、それはいつか
子育てに終わりはあるか。今みたいな世の中になったら、はっきりした線は引けないでしょう。
昔だったら、元服とか、結婚とか、おとなになる区切りがちゃんとあったわけだけど。
だから親はいつまでも心配なわけですが、まあ、心配も楽しみのうちと思ったらいいです。
心配することがあるなんて大したもんです。そういう心配をするということが人生なんだから。
心配をしながら「まあこのぐらいの心配はさせてもらうわ」と思って生きるか、心配に耐えられずにふらふらになるかです。
それでも、子どもが本気の恋愛をしたら、親の役割もある程度終わったといえるでしょう。
それで子どもが好きな相手を連れてきたら、まったく親の気に入らないタイプだったということがあり得ますね。それは子どもが「うちの親はダメだ」と言ってるのと同じなんです。
もちろん「やっぱりあの人は嫌い」とか「あわん」とか、意見は好きに言っていいんですよ。いくら言ってもいいけど、どんな相手を選ぶかというのは、親がそれまでやってきたことが全部入った「総決算」として出てきているんです。
それがわかったらなかなか簡単にはいえません。
ひとつには、あまりにも密着した関係というのは、裏切りによってしか離れられないところがあるんです。これは人生のものすごい悲壮なところです。
恋人とか、友人とか、親子とか、すごい裏切りによってはなれて行くことがあります。
裏切りは「裏から切る」って書くように、一般的に言ったら、人間のやることで一番最低のことでしょう。絶対的な信頼関係を無にするんだから。しかし悲しいことに、その最低のｋとをするより仕方がないときがあるんですね。
そのことがわかったら、あとで関係は回復しますけど。
親子関係も同じです。子どもが親を裏切るようなことをせざるを得なくなることがあるんです。あんまり母子一体感が強すぎたら、親を裏切る格好でしか結婚できないとか、親から見て絶対反対の人を相手に選ぶほか、親と離れようがないとか。
逆に幼児期に母子一体感を十分に経験しなかった場合、うまくいくときは異性との関係の中で一体感を取り戻すことがあります。恋愛関係の中に親子関係が入ってくるわけです。
ただ、そういうことを求めている男の人とつきあった場合、女の人がだんだん耐えられなくなってくることがあります。好きは好きなんだけど、「私はあなたのお母さんじゃないよ」と言いたくなる。
「この際お母さんもやろう」と思うぐらいの人はそれでいいですが。
悲劇的なのは、お母さん役をしてくれる女性と結婚して、母子一体感が十分に癒されたら、その女性と別れてしまって、ずっと若い、魅力的な女の人と結婚する男の人がいるんです。
アメリカに多いですね。新しい奥さんのことを「トロフィーワイフ」なんて、呼び名まであるんです。
女の人が母子一体感を求めている場合は、お母さん代わりになれるような、優しい母性を感じさせるような男性を選びます。また、次から次へといろんな男の人とつきあうこともあります。
肉体的な一体感はどこか母性に似るんです。
恋愛のときは、いろんなことを取り戻そうとするから、不可解なことがいっぱい起こります。なんかしらんけどすごい好きになって、その人といるだけでうれしいなんてなるのは、そこにいろんな要素が入ってるからで、あとではいろいろ言えるけど、本当は理屈を超えて怒ってるんです。そしてそこにすごく癒しの機能が働きます。
